研究課題/領域番号 |
25770237
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
吉川 圭太 神戸大学, 人文学研究科, 特命講師 (80645408)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 在野法曹 / 社会運動 / 法律闘争 / 市民的自由 / 社会権 |
研究実績の概要 |
本研究は、近代日本における弁護士の動向に焦点を当て、戦前・戦後の社会運動・人権擁護運動を歴史的に再検証することを目的としている。社会と法(司法)の接点に位置する実務法曹たる弁護士を対象とし、特に社会運動に積極的に携わっていった「社会派弁護士」に着目することで、近現代日本の社会運動における法の問題や人権擁護の可能性、歴史的制約を明らかにするものであり、具体的にはその中心的存在であった布施辰治及び自由法曹団を考察対象としている。 平成26年度は、石巻文化センター所蔵資料のうち東日本大震災以前に調査及び撮影した原資料及び、法政大学大原社会問題研究所所蔵資料、富士見市立中央図書館渋谷定輔文庫資料の整理・分析を継続した。また、国立国会図書館所蔵の戦前・戦後の法曹関係資料を調査するなどしたほか、戦時期の布施辰治の思想と動向に関して関係文献の調査収集及びその検討を継続した。 また、戦前の社会運動関係文献の検閲体制とその実態に関して、他分野の研究者と議論することができた。このことは、1920年代から30年代の社会運動とそれに対する法運用について重要な課題であり、今後も継続して研究を継続する。 これらの基礎的作業を進めるとともに、平成26年度は、戦前自由法曹団に関する中間的な研究成果を論文化するなどした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画である、自由法曹団を中心とする戦前在野法曹集団の社会運動内及び在野法曹界での動向及び、1920年代後半の普通選挙―治安維持法体制下での再編過程については、中間的な研究成果を論文化した。 また、戦前の検閲に関して他分野の研究者と意見交換することができ、戦前の検閲・書誌研究における成果と課題を本研究に今後反映させていく上で、認識を深めることができた。 石巻文化センター等の所蔵資料については、すでに撮影収集した資料の整理分析作業を継続し、また戦時期の布施辰治関係の文献の調査収集を進めた。これらについては、本研究の基礎的作業であるので、引き続き精力的に調査・整理を進め、分析を深めていく必要があると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年度の基礎資料・周辺資料の調査収集を継続するとともに、本研究課題の成果を公開する。とくに従来の研究史で立ち遅れている戦時期の布施辰治の思想と動向について、昨年度までの基礎的作業を踏まえ、論文化できるようにする。 また、植民地朝鮮・台湾を視野に入れた戦前の在野法曹の動向や司法のあり方について研究を進めるとともに、戦前日本の検閲と社会運動についての検討も深める。戦前における人権擁護の動きの中で重要な部分を構成するこれらの課題については、研究会を開催するなどして、他分野の研究者との議論を通して研究を深化させる。 なお、東日本大震災で被災した石巻文化センターに所蔵されていた布施辰治関係資料については、復旧途上であり、資料閲覧が困難な状況である。東日本大震災発生以前に撮影収集した原資料の分析をさらに続け、その成果を研究発表あるいは論文化して還元する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調達方法の工夫などにより、当初計画より経費の節約ができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度である平成27年度は、資料調査の回数や整理補助を増やし、基礎的研究を進める。また、研究成果を公開し、その内容をさらに深めるために、東北や東京などでの研究会に参加する旅費を増やす。
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