研究課題/領域番号 |
25770245
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
桃崎 有一郎 立命館大学, 文学部, 任期制講師 (80551150)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 中世礼制史 / 武家儀礼 / 鎌倉幕府 / 椀飯 |
研究概要 |
【研究目的】本研究は、鎌倉幕府の最も根幹的な儀礼の再検討から武家儀礼研究をやり直すことにより、歴史学の諸分野(政治史・社会経済史など)と比べて補助学問的に位置づけられていた儀礼研究を、自律的・独立的な学問分野=「中世礼制史」として再構築するための方法論を確立しようとするものである。 【研究実施計画】上記目的に基づき、平成25年度は、作業A:鎌倉幕府の主要儀礼関係史料の網羅的調査・抽出・データベース化、作業B:未紹介資料の調査紹介を計画した。 【成果】上記計画に基づき、本年度は作業Aを50%程度進捗させ、また作業Bとして2件の史料調査・紹介を行った。また作業Aを20%程度終えた段階で得られた知見を基に、2件の研究論文を公刊した。1件目は、新たな中世礼制史の取り得る方法論の試案を提示し、その手法が歴史像をどのように塗り替える可能性を持つかを論じたもの。2件目は、1件目の派生的問題として、儀礼・組織などの統率行為を意味する「管領」という単語の歴史的変遷・中世段階固有の特質を論じ、儀礼論の基礎研究の一部とすべく問題提起した副産物的成果である。 また作業Bとして、2件の研究論文を公刊した。1件目は、慶應義塾図書館貴重書室が所蔵する鎌倉幕府御家人の家伝文書の原本調査を行い、活字化と基礎的考察を行ったもの。2件目は、昨年度に引き続き、朝廷の実務官僚でありながら室町幕府の儀礼運営に深く関与した廷臣広橋綱光の日記の翻刻をおこなったものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度に計画した[作業A:鎌倉幕府の主要儀礼関係史料の網羅的調査・抽出・データベース化]、[作業B:未紹介資料の調査紹介]のうち、作業Bについては当初計画通りのペースで成果を公刊した。しかし作業Aについては、史料収集を20%程度終えた段階で収集済み史料を点検し、いかなる史料のいかなる部分に出現が偏るかを大まかに分析した。これは、以後の史料収集作業において収集漏れを防止するため、特に留意しておくべき出現傾向を把握しておく目的で行った分析である。その予備的分析の結果、図らずも、中世武家礼制史のイメージを一新する傾向が見出され、今後の当該分野研究のために速やかに注意を促すべき事実(「椀飯」儀礼の主催者は儀礼の主役ではなく事務局長という裏方であった事実)が浮上したため、予察的考察として論文化すべきと判断した。これにより、当初は平成25年度中に予定されていなかったにもかかわらず、論文の形で研究成果を蓄積することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、上述の作業B(未紹介史料の調査紹介)を継続するのと並行して、作業A(鎌倉幕府の主要儀礼関係史料の網羅的調査・抽出・データベース化)を完成させることを計画している。当初想定していた収集対象の100%を終えることを目標とし、前年度の予察的考察を踏まえ、収集データ全体を対照とした本格的分析を開始する。 ただし、前年度の研究遂行過程において、データ収集が100%完了する以前に随時収集方針を再検討・洗練する必要があること、またその作業によって(経過報告的要素を含むものではあるものの)着実な研究の前進を形ある成果として発表可能であることが判明した。そこでその経験を踏まえ、データ収集の完遂率が100%に至ったか否かに必ずしもこだわることなく(もちろん最終的には計画通り本年度中の完遂を目指す)、随時研究成果を公表してゆく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究が収集対象とする文献史料の単価が数千円~1万円単位であるため、本年度予算で購入可能な範囲内で史料を収集した結果、千円に満たない範囲で執行できなかった残額が生じた。 平成26年度は、物品費(古代・中世移行期の儀礼関係図書購入費)¥200,000と 、史料調査目的の旅費¥200,000の執行を予定している。平成25年度から繰り越す次年度使用額は、上記物品費に合算して執行する予定である。
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