研究課題
【研究目的】本研究は、鎌倉幕府の最も根幹的な儀礼の再検討から武家儀礼研究をやり直すことにより、歴史学の諸分野(政治史・社会経済史など)と比べて補助学問的に位置づけられていた儀礼研究を、自律的・独立的な学問分野=「中世礼制史」として再構築するための方法論を確立しようとするものである。【研究成果】本研究は2段階に分かれる。〔段階1〕まず鎌倉幕府に関係する既知の記録・文書から網羅的に、また未知・未紹介の記録・文書の採訪・調査・紹介を通じて追加的に、幕府儀礼に関わる史料を収集し、データベース化した。〔段階2〕次に、抽出された史料群をもとに、個別儀礼ごと(椀飯・流鏑馬の順)に起源・沿革・変遷過程などの基礎的考証・検討を行い、儀礼的意義や、そこに発露した当該期の思考様式・社会構造・政治的変動などを論証・解明・展望し、論文・著書・学会発表などの形で公表する。本研究では前年度(平成26年度)までに上記の〔段階1〕を終え、〔段階2〕のうち、基礎史料として重要な古記録・古文書の調査成果を3件、「椀飯」儀礼の新たな歴史的意義を指摘した論文1件、関連論文1件を発表した。そして最終年度(平成27年度)においては、古記録の調査成果の発表を継続するとともに(1件)、椀飯儀礼の基礎的考察を軸として鎌倉幕府を取り巻く儀礼的環境の全体像を予察的に俯瞰した共著著書1件・学会発表(1件=招待講演)を発表した。以上により、本計画では、計画段階で可能なら開始すると予告していた「流鏑馬」研究については、論文・学会発表等の形で公表するには至らなかったものの(ただし調査には着手ずみ)、「椀飯」儀礼については、古い水準による研究を塗り替える、最新の拠るべき基礎研究が進展し、学界に一定の貢献を果たしたと考えられる。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)
東京大学史料編纂所研究紀要
巻: 26 ページ: 184-192