本研究は、19世紀オランダで刊行された啓蒙雑誌Nederlandsch Magazijn(1834-1845)・Nieuw Nederlandsch Magazijn(1846-1856)(以下マガゼイン)とその翻訳書および翻訳者である古賀謹一郎について注目し、原本や翻訳書の項目をデータベース化、比較することで、幕末における海外文化の収集活動の実態と海外に対する意識について考察するものである。本年は最終年度であり、以下の作業をおこなった。 1.マガゼインすべての項目を入力し、研究の基礎となるデータベースを完成させた。 2.上記データベースに対し、宮内庁書陵部及び東京国立博物館が所蔵するマガゼインにみられる貼紙、書き込みなどの調査をおこない、データベースに追加した。 3.マガゼインを原本として翻訳した史料である『官板 玉石志林』、「和蘭宝函」(宮内庁書陵部所蔵本)、「調所教授方譯目」(早稲田大学図書館所蔵)の項目についてデータベースを作成した。 4.古賀謹一郎「謹堂日誌 巻三十五」(慶應義塾学図書館所蔵)を調査し、熟覧・撮影をおこなった。 これらの作業を通して、原本であるマガゼインには地誌、歴史、自然科学、人物伝など多岐にわたる記事が書かれており、宮内庁書陵部本にみられる貼紙や書き込みから、古賀謹一郎がマガゼインのすべてに目を通していたと考えられる。また、「和蘭宝函」及び「調所教授方譯目」は、マガゼインを翻訳し『官板 玉石志林』として編集する過程を示す史料である可能性が高いといえる。
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