研究課題
本研究は、中央アジアのイスラーム史において大きな位置を占めるナクシュバンディー教団の18-20世紀における変容を解明することを目的とした。具体的には、18世紀のインドに生まれた同教団の改革派ムジャッディディーヤの中央アジアにおける拡大の過程と旧来の勢力との関係を実証的に明らかにすることを目指した。平成29年度は、18-19世紀の中央アジアにおけるナクシュバンディー教団の活動について豊富な情報を伝える史料、ムハンマド・ハキーム・ハーン著『選史』の分析のため、イランで現地調査と史料収集をおこなった。本史料には著者の1820年代におこなったメッカ巡礼の旅行記が含まれており、復路のイラン滞在の記録には、ナクシュバンディー教団の指導者の家系に生まれた著者の目から見た当時のシーア派とスンナ派の確執が鮮明に描かれている。一方で著者は各地で著名なシーア派の聖地の参拝もおこなっており、当時の両派の関係性はより慎重に評価されるべきである。また、著者はカージャール朝君主ファトフ・アリー・シャーやクルディスターンの支配者等、各地の地方統治者と面会の機会を得ており、『選史』のより精密な分析のためにはイラン側の史料との照合も必要である。本調査においては、サナンダジ、マシュハド、サラフスでの実地調査により、著者の旅行記部分の記述がかなり高い精度でなされているという確信を得ることができた。また、地方史に関する資料の収集もおこなった。
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Devin DeWeese and Jo-Ann Gross (eds.), Sufism in Central Asia: New Perspectives on Sufi Traditions, 15th-21st Centuries
巻: - ページ: 162-190