本研究では、中央アジア出土文書を所蔵する海外研究機関に赴いて実見調査を行い、その成果を踏まえて、国内にて調査結果の考察、データベースの作成・分析を行ったのち、唐~元代中国における文書行政の実態、すなわち伝達を媒介する公文書の書式・機能、文書伝達のネットワークの再構築、そしてそれを運用した行政機構及び運用原理・制度を解明することを目的としている。また、文書内容を正確に理解するため、文書の発受を行った行政機関の遺址や文書行政に携わった官吏の残した石刻史料などの調査も実施した。 最終年度にあたる本年度は、以下の研究を進めた。 (1)陝西省・寧夏自治区の宋元代文書行政に関する文物(文書・石窟題記・石刻)を調査し、そのテキストを校訂・分析するとともに、また関連する遺址の調査を行った。 (2)カラホト出土文書をもとに元代公文書の書式・機能の分析を進め、情報伝達経路や運用原理について考察した。 (3)元代文書行政に関する研究成果の一部を学術論文として公表した。特に、典籍史料に残された元代公文書書式とカラホト文書との実例を比較し、制度とは異なる文書運用の実態について明らかにした。このほか、文書が発見された敦煌やカラホトの社会状況について、下記の論文を発表した。 (4)これまでの総括として、唐~元代の公文書や情報伝達ネットワークのモデル化、それらから見える文書行政のあり方やその社会的・制度的背景を考察した。
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