遼代で行われた近隣諸国に対する公主降嫁の事例では、ほぼ一貫して国際情勢を自らに有利に導く外交政策の切り札として利用している。かつての世界帝国として君臨していた唐の外交政策を継承すると同時に、遼独自の方針をも存在していたということが垣間見える。近隣諸国に対して公主降嫁を行うことを全く否定的に捉えることなく、当時の東部ユーラシアにおける国際関係を遼の統率の下で効果的に機能・持続させるための重要な一手段として婚姻に基づいた外交政策を実施したのである。婚姻に基づいた外交政策は、非漢民族いわゆる北方諸族によって建国された王朝において盛んに行使された「北方的」な性格を有するものであったと結論付けられる。
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