本研究では、清朝統治下の東トルキスタンにおいて特権的な地位を獲得したトルファン郡王家に焦点をあて、その具体的な役割を明らかにすることにより、オアシス統治の実態の解明をめざした。彼らは清朝政権の一端に組み込まれ、それに追従することで台頭した眷族であったが、同時にオアシス社会で独自に権力を行使しえる政治空間の構築と拡大に積極的であった。その過程でライバルを排除し、利権を掌握し、また自らの立場とその正当性を説明するロジックさえも獲得していった。本研究の結果にもとづけば、清朝統治下であっても、オアシス・レベルの通商・外交・水利などを差配する権限は、通常彼らの掌中に握られていたと想定できるのである。
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