研究課題/領域番号 |
25770260
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高木 小苗 早稲田大学, 文学学術院, 招聘研究員 (70633361)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歴史 / イラン / モンゴル / 私財 / 人的関係 / 相続 / 叙述史料 / 文書史料 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、後述の成果について、報告と論文執筆を行い、関連資料の収集・分析を進めた。 イルハン国の財政構造と王族による人材登用の特性を明らかにするために、公財(主に政庁が人口調査と税の割付を行った所領・民)と支配者イルハンに帰属する私財・私民の関係性・相違について、イルハン国期のペルシア語叙述史料・文書史料にもとづき検討した。具体的には、従来分析の進んでいないイルハンを含むモンゴル王族の私財・私民に着目し、その特質(所有者・内容の構成、獲得要因等)を整理した。また特にイルハンの私財・私軍の形成過程・相続経路・管理形態について、整理・分析を行った。 なお分析の参考として、ペルシア語史料と東方のモンゴルの史料『元朝秘史』に見られる私財・私民の概念・特質を比較し、さらに元朝の財政構造と王侯の私財・私民の事例を参考として、イルハン国期に見られる私財の相続経路・管理形態の特徴・変化を呈示・解明した。 これらの分析の結果、平成25年度までの研究成果の一部と合わせて、モンゴル帝国カーンが西アジアを直接支配した時期からイルハン国創設者フレグの子2代アバガ治世にかけて、フレグ家と対立した王家のイランにおける私財が実質的に減少していったこと、一方、アバガ治世後半に、イラン各地にアバガの私領が設定され、この私領が歴代イルハンにより継承され、イルハンの私財の基盤となっていったことがわかった。但し、これらの私財とは別に、各イルハンは即位前より彼個人に帰属する私財・私民を形成しており、即位後もそれらを維持した。それらは、彼の死後、次のイルハンの管理下に入る場合もあったが、故イルハンの子孫がその継承権を主張する事例や彼らの主張が承認されて実際に獲得に至る事例が多く確認されることより、親の私財を子孫が相続するというモンゴル古来の慣習が受け継がれていたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記したテーマについて、従来の研究ではほとんど試みられていない文書史料と叙述史料の情報の整理・対照・統合を行い、さらに東方のモンゴル史料・研究を参考として分析を深め、オリジナリティの高い成果を英語論文としてまとめることができた。現地調査については、事前準備を深める必要が生じ、研究の進行に支障がないため、平成27・28年度に重点的に行うこととし、平成27年度は、前年度までに収集した関連資料の分析を進め、その成果を論文としてまとめるとともに、これまでの未発表の成果と合わせて、学位論文として提出する見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度中に、学会報告を行い、その内容を雑誌論文として発表し、これまでの未発表の成果を整理する。それらを合わせて、学位論文としてまとめる。 平成27年度後半は、昨年度に引き続き、海外の実地調査・史料調査の準備を進め、年度末に、実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでに収集した資料分析を深めた結果、当初、平成26年度に予定していた現地調査について、さらに事前準備を深める必要性が生じ、当面、研究の進行に支障がないため、平成27・28年度に行うこととした。そのため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度前半に現地調査のために必要な用具・資料を購入し、年度末に、それらを使用して現地調査を行う。
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