研究課題/領域番号 |
25770264
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
鈴木 周太郎 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特任講師(ジュニアフェロー) (30635735)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ジェンダー / 教育 / 歴史学 / アトランティック・ヒストリー / 歴史教育 / 女性の権利 / 出版文化 / 共和国の母 |
研究概要 |
近代女子教育の大西洋を越えた規模での発展過程を明らかにするために、それが先駆的に実践されていた建国期アメリカの女子教育および権利論について検討することを目的とした本プロジェクトの1年目にあたる平成25年度は、研究実施計画にしたがって、(1)9月(マサチューセッツ州ウースター)と3月(同州ウースターおよびボストン)に調査を実施し、(2)12月に一橋大学で開催されたジェンダー史学会第10回年次大会において研究成果の報告をおこなった。 調査に関しては、研究計画のなかでもとりわけ(a)初期アメリカにおける女子教育についての議論と実態、(b)大西洋を越えた外交問題や党派対立と「女性の権利」論との関係、を明らかにするための資料の収集に重点をしぼっておこなった。(a)についてはスザンナ・ローソンとエマ・ウィラードの女子教育についての出版物やマニュスクリプトを、(b)については建国期の出版人マシュー・ケアリーの書簡やビジネス文書などを収集した。以上を通じて、平成25年度の主要な課題であった資料収集について順調に計画を進めることができた。とりわけ、スザンナ・ローソンの女子学校で使われた教科書やノートをウースターにおいて調査できたことは、建国期女子教育の実態を明らかにするうえで特筆すべき成果であった。 このようにして収集した資料をもとにジェンダー史学会でおこなった報告「アメリカ建国期における「女性の権利」論の興隆―環大西洋史の視点から」では、1790年代のアメリカ合衆国において急激に「女性の権利」が注目されるようになった要因を、当時の政治や社会の国際的な動向、特にフランス革命と関連づけながら考察した。成果を論文投稿などを通して発表することは平成26年度以降の計画の最大の要素であり、今回の学会報告によって得られた知見は本プロジェクトの遂行に有益なものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間の本プロジェクトの1年目(平成25年度)は研究調査に重点をおくとしていた。実際に米国における資料調査を2度行うことができたことは、2年目以降の研究の遂行にとってとても有益なものであった。また、2年目の平成26年度以降の課題と考えていた建国期以降(19世紀)の女子教育や「女性の権利」論の展開についての考察に必要な資料も多く得られたことは大きな収穫であった。また、成果の発表も初年度の平成25年度から学会報告を通して行うことができたことを考慮すると、全体としておおむね順調に進展しているといって良いと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本プロジェクトの1年目(平成25年度)におこなった資料調査をもとに、2年目の平成26年度以降は研究成果の発表により力を入れる。それに加えて、平成25年度に収集した資料の地域的偏り(マサチューセッツ州)を解消するために、フィラデルフィアでの研究調査も計画している。 調査で19世紀の女子教育関連の資料を多く収集したことで、当初計画していた対象年代よりもやや長い時期が研究対象になったが、平成26、27年度の2年間の研究でカバーすることが可能である。平成25年12月に研究代表者がおこなった学会報告において、ヨーロッパ史研究者から当時の英国やフランスにおける「女性の権利」論の位置づけについての多くのコメントや助言を受け、アメリカ一国に留まらない環大西洋的な視点の必要性をより痛感した。平成26年6月にポスター発表をする予定の日本西洋史学会などを通して様々な歴史研究者との交流を深めることで、本研究の完成度をよりいっそう高めていきたい。
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