本研究は、オーストリアとドイツの公文書館における史料調査を実施し、ハプスブルク帝国海軍と植民地主義のつながりを考究した。この「植民地なき」帝国の海軍は、音楽やスポーツなどの文化活動を通して、西洋のグローバルな植民地支配体制と深く交わり、東アジア帝国主義世界の主体的なアクターとして振舞う様子が本研究により明らかになった。こうして、「領土」ではなく海洋世界を動き回る「海軍」を軸に考察することで、植民地支配を行なわなかった国もグローバルな植民地主義体制と構造的に結びつき、その一部を構成していた歴史的事実を深く掘り起こすことができた。
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