研究課題/領域番号 |
25770270
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
伊東 剛史 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 講師 (10611080)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / イギリス / 動物福祉 / 動物倫理 / 動物観 / ダーウィン / 進化論 / 動物生体解剖 |
研究実績の概要 |
今年度は本研究計画(3年)の2年目にあたる。昨年度は19世紀前半を中心とする動物関連問題の史資料を広範に収集し、その分析を行った。これに対し、今年度は世紀後半に史資料収集と分析の対象を移行した。具体的には、ダーウィンの進化論が当時の人々の動物認識や、動物が関係する社会政策の策定におよぼした影響を明らかにするため、ダーウィンの著作、書簡、研究ノートの分析を進めた。また、動物実験(動物生体解剖)論争に関する資料の収集を行った。これらの研究をとおして、19世紀イギリスにおける動物福祉の法制度と社会的な動物認識の関連性を、具体的に明らかにすることができた。 なお、本研究プロジェクトの個々の成果、および派生的な研究成果として、(1) 伊東剛史「帝国・科学・アソシエーションー「動物学帝国」という空間」近藤和彦編『ヨーロッパ史講義』(山川出版社、2015年5月)、(2)伊東剛史「近代科学の「周縁」ー 19 世紀イギリスにおけるジェントルマン科学」『専修大学人文科学研究所月報』 275号(2015年3月)、(3)"Cruelty in Smithfield: meat trade and animal law in nineteenth-century London" 国際都市史学会(リスボン、2014年9月)などを発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
史資料の調査と分析については、史資料の所在についてあらかじめ予備調査が終わっていたこともあり、効率的に進めることができた。とくに、ダーウィン関連の史資料については、異なるタイプの一次史料が豊富にあるなかで、重要な史料群に着目することで、先行研究にはない新しい視点を提示することができたと考える。成果報告の点でも、国内外の研究集会で報告を繰り返し、そこから得られたフィードバックをもとに、論文執筆を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は史資料調査の対象を世紀転換期へと移す。従来指摘されてきた動物愛護運動とフェミニズムや社会主義との関連性を実証的に再検討する。今年度までのリサーチで、18世紀末から19世紀後半にかけてのイギリスにおける動物認識の変容を、その背後にあるさまざまな社会環境の変化と関連づけながら理解することができた。最後の課題は、20世紀初頭にかけて成立した動物福祉の制度的枠組みが、その後さらにどのように変化したのかについて、見取り図を得ることである。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はイギリスの図書館・文書館において資料調査をする予定だったが、これについては近年利用可能となった史料データベースのオンラインサービスを活用することで、かなりの程度国内において進められることがわかった。そこで、前年度の研究成果報告の機会を優先し、リスボンで開催された国際都市史学会において研究報告を行った。そのため、当初の予定ほど旅費は執行されなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は上記のオンラインサービスではアクセスすることのできない、まだデジタル化されていない史料の調査を補完的に行う。また、本プロジェクトは最終年度となるため、国外学会での研究報告も行う。これら史料調査と研究報告のための旅費として、「次年度使用額」を利用する計画である。
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