研究実績の概要 |
本研究の目的は、19世紀英領インドの言語・教育・官吏登用政策がいかに「生半可に教育された現地人」と呼ばれる人々を生み出したかに着目しながら、被支配者を支配者の言語で教育することで効率的に官僚を調達しようとする政策が抱えた構造的ジレンマを歴史的に明らかにすることである。 この目的を達成すべく、本年度は関連一次資料の分析に努めた。特に、カルカッタ大学の設立(1857年)が、イギリスのベンガル統治といかに関係していたかを解明するため、Frederic J. Mouat, Proposed Plan of the University of Calcutta (Calcutta, 1845)およびそれと関連する多数の一次資料を詳細に分析した。一方、カルカッタ大学が実際にどの程度インド人の文官を輩出したかを探るべく、Krishna Chandra Roy, High Education and the Present Position of the Graduates in Arts and Law of the Calcutta University (Calcutta, 1882)に掲載された卒業名簿の統計的分析にとりかかった。さらに、1870年代末から1880年代前半の「英語教育」論争において、政府主導の教育政策に反対する論陣を張り、その後の政策転換にも影響を与えた宣教師ジェームズ・ジョンストン(James Johnston)の思想と行動を明らかにするためにOur Educational Policy in India (Edinburgh, 1879)やThe Higher Education and the Education of the Masses in India (Edinburgh, 1882)等の著作の分析を行った。 上記の研究の成果の一部は2015年12月に開催されるThe 4th International Congress of Bengal Studiesで発表する予定である。
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