本研究は、イギリス支配下のベンガルにおいて、現地人官吏の養成を目的とする「英語教育」が、1870年代終わりまでには「生半可に教育された現地人」と呼ばれる<落伍者>を数多く生み出していたこと、また、高学歴失業状態への彼らの不満が体制批判につながる不安感を支配者層の間で共有され、彼らの向学心と上昇志向を一種の心理的病理として表象する人種主義の広まりにつながったことを示した。それによって、本研究は教育を通じて官僚を効率的に現地調達する植民政策が必然的に抱えた構造的ジレンマの存在を指摘しつつ、現地人エリートの表象に焦点を合わせた従来のものとは異なる視座から人種主義にアプローチする可能性を提示した。
|