本研究は、中世ヨーロッパのアルプス地域における都市と山の関係の中での政治行為と法文化の交錯と創造を検討課題とした。中世ティロル南部では都市が日常的紛争解決の舞台となって市民と貴族が協働し、ローカル社会を超え問題関心を共有するネットワークと空間を形成していたことを明らかにした。また同地域の公証人文書と裁判帳簿の発展を検討し、アルプス南北で交錯する文書文化を分析した。そしてこのような政治的実践空間を、地域をつなぐ政治主体の行為から考察し、開かれ変容する地域的主体間の関係性と公権力の定める枠組みに対するオルタナティヴ性を示唆するものとして「間地域性(インターローカリティ)という概念を提起した。
|