研究課題/領域番号 |
25770274
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 建治 北海道大学, 文学研究科, 専門研究員 (00580929)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 内耳土鍋 / 北海道アイヌ / 樺太アイヌ / 千島アイヌ |
研究概要 |
平成25年度の研究実績は、以下の2点にまとめることができる。 1、北海道オホーツク海沿岸地域出土の内耳土鍋の地域的特徴の検討。 千島列島やサハリン島における内耳土鍋文化との系統関係の解明を目指し、北海道オホーツク海沿岸地域出土の内耳土鍋資料の調査に着手した。対象とした遺跡は、稚内市オンコロマナイ2遺跡、枝幸町風烈布川左岸遺跡、北見市(旧常呂町)ライトコロ川口遺跡の3地点で資料数は計6点である。なお、オンコロマナイ2遺跡の資料2点については未報告資料であった。これらの資料を中心に検討した結果、オホーツク海沿岸地域では、大きく2つのグループに分けられることが判明した。ひとつは「山形状の保護耳がある縦耳タイプの厚手大型土鍋」であり、もうひとつは「保護耳を持たない縦耳・横耳タイプの薄手小型土鍋」である。このようなオホーツク海沿岸地域にみられる特徴が、サハリン島や千島列島の内耳土鍋、そして道南部の内耳土鍋とどのような文化的関連性を有しているのかは今後の課題である。 2、千島アイヌ文化期の内耳土鍋の分布傾向の分析。 北千島の占守島・幌筵島で発掘調査された千島アイヌ文化期の住居内部から出土した内耳土鍋の分布傾向を分析し土鍋使用空間を同定した。検討する対象は、1930年代に馬場脩により発掘調査された、内耳土鍋を伴う竪穴住居の計10軒である。検討の結果、「出入口部である張り出し部」と「加熱・暖房施設周辺」に集中することが理解された。今後の展開としては、北海道アイヌや樺太アイヌの内耳土鍋の分布傾向と屋内作業空間の関係性を調べ、千島アイヌの状況との比較検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究計画では、①「型式学的分析による編年と地域的特徴の再構築作業」と②「遺跡内空間分析による内耳土鍋をめぐる人間行動の復元作業」であった。 ①の計画に関しては、研究実績1で記述したように、北海道オホーツク海沿岸地域における地域的な特殊性を指摘することができた。また、②の計画に関しては、研究実績2で記述したように、千島アイヌ文化期の住居内部における内耳土鍋の使用空間を同定した。 このように申請時の研究計画を概ね達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究における方策としては、北海道南部やサハリン島で出土した内耳土鍋の資料調査を採用する。道南地域では、上ノ国町を中心としたその周辺に内耳土鍋が確認されていることが知られている。これらの資料の所在を確認し、実見による資料調査を実施する。また、平成25年度に調査したオホーツク海沿岸地域の資料との比較をおこなうため、サハリン島出土資料の調査も同様に実施する。 なお、内耳土鍋の未報告資料が国内外にまだ存在すると考えられるため、引き続き情報を集め、未知なる資料を探し出し調査をおこなう。
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