平成28年度については、九州地方および信濃・越後・佐渡地方などの国府・国分寺等出土瓦についての資料調査をおもにおこなった。とくに信越佐渡地方の瓦についての論考は、「信越地方の国分寺瓦」(『名古屋大学文学部研究論集』2017)として上梓し、その変遷過程を瓦当文様及び製作技法から系列化するとともに、7世紀代の造寺活動が比較的低調であった各国の国分寺造営が、他国に比してやや遅れつつも、国ごとにあらゆる手段を講じて造営を遂行していった様子をあきらかにした。また、生産地としての瓦窯の様相について、尾張地域を題材として、古代から中世にかけての変遷過程を通時的に概観(「愛知県(尾張地域)の瓦窯の構造」『中部地方の瓦窯の構造』2016)するとともに、織豊期から近世にかけての瓦にも視野を広げて論考を著した(「瓦の生産と流通」『愛知県史 資料編5 考古5 鎌倉~江戸』2017)。 国府・国分二寺・駅家等の出土瓦についての集成は、最終年度の本年度でほぼ終了しており、今後は計画どおり、国分二寺をはじめとした地方官営諸施設の造瓦組織の編成のあり方とその変遷に関する全国的な著書を、数年かけて執筆・上梓する予定である。 それに先んじて、著書『古代地方寺院の造営と景観』を、2017年度中に刊行予定である。この著書においては、国分寺を含めた古代地方寺院の立地および出土瓦のあり方から、その造営背景について考究しており、本研究費でおこなった国分寺等の出土瓦に関する資料調査の内容を含むものである。
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