研究課題/領域番号 |
25770276
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中久保 辰夫 大阪大学, 文学研究科, 助教 (30609483)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 日韓交流 / 渡来人 / 初期窯業生産 / 集落動態 / 土器使用痕跡 / 韓式系土器 / 陶質土器 / 異文化受容 |
研究概要 |
本研究は、土器資料の分析をもとに日本列島から出土した韓半島系土器の器種構成の変遷およびその受容・浸透過程が、時期によって変化することを実証し、その背後にある日韓交流の質的変化を明らかにすることを目的としている。 本年度は、当初の研究計画に従い、最新の調査・研究事例に基づく韓半島系土器の集成と変遷図の作成に重点をおいて研究を実施した。その過程において、情報収集に努めるとともに、得られた情報をもととして近畿、九州、山陽、四国、関東各地域において資料調査を実施し、現地遺跡踏査および資料熟覧および実測作業を行った。 当初の目標であった5世紀の韓半島系土器分布、韓式系軟質土器の変遷と受容過程については、一部の内容を雑誌論文として公表した。また、資料調査のなかで従来あまり着目されてこなかった施文手法等、韓半島系土器にかんする分析視点も得ることができた。この研究成果についても一部を公表している。 さらに研究を推進する過程において、新たな研究の展望も得ることができた。古墳時代の土器に関しては、アメリカ合衆国で発表する機会を得ることもでき、発表を通じて現地研究者との意見交換を行い、国際発信にかんするアプローチも検討できた。 そして、研究目的としていた日韓交流の質的変化を明らかとすることに関しては、研究の深化により3・4世紀における対外交流と5世紀の対外交流は、戦略が異なるのではないかという着想を得るに至った。この論点については、次年度も継続して取り組むとともに、成果の一部を第79回アメリカ考古学会において公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記した研究計画に従って、ほぼ計画通りに遂行できている。申請書では、3つのテーマを掲げ、そのうち2つのテーマについて2013年度に取り組む計画であったが、その第1テーマである5世紀の韓半島系土器分布、韓式系軟質土器の変遷と受容過程について、一部ではあるが公表できたことは着実な実績となった。また、第2テーマ、第3テーマに関しても資料調査を通じ、着実にデータを得つつある。 研究成果の公表については、論文、学会、図書など、様々な媒体を通じて、行うことができた。2013年度に米国にて口頭発表をおこなったこと、さらに2014年度春にアメリカ考古学会で発表する機会を得、その準備ができたことは、大きな成果と言える。 なお、他の事業との連携という形ではあるが、古市古墳群の内実を示す良好な資料である大阪府野中古墳の展示会準備作業、展示解説を通じて、研究の深化およびアウトリーチ活動も積極的に実施することができた。また、市民講座においても、大阪ガスクッキングスクールと大阪大学が共同で開講している講座に出講し、「おいしいごはんの考古学」と題する講義をおこなうなど、自身の研究成果を特色ある方法で公表できたと自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
現時点においてほぼ当初計画通りに進められているので、継続的に研究を実施していきたいと考えている。ただし、2014年度春にアメリカ考古学会で発表する機会を得たことは、当初の研究目的を深化する上でも、また研究成果の国際発信という意味でも大きな前進となるために、研究計画の前向きな変更となる。 本研究では3つのテーマを柱として、研究を遂行しているが、とくに(2)韓半島系土器の受容過程の比較、(3)有穿孔小型丸底土器とハソウの集成およびその実物観察による系譜および土器受容過程の検討という研究テーマを重点的に進め、資料に関する情報収集、資料調査および遺跡踏査、資料分析を積極的におこない、その成果を論文、学会発表などで公表していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
おおむね計画通りに執行できたが、残額として6531円がのこった。全体からすると少額ではあるものの、当該研究費は基金であり、次年度の有効活用を計画したため。 次年度使用額については、出張旅費に用いる予定をしている。これは次年度に海外学会発表の必要が生じたため、国内旅費をわずかでも確保するためである。
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