本研究は、日本列島出土韓半島系土器の変遷およびその受容過程を考古学的に実証し、その時期的・地域的展開から背後にある日韓交流の質的変化を探ることを目的とした。最終年度に実施した研究の成果は、次の通り。(1)韓半島における最新の調査・土器研究事例を基礎に、日本列島の須恵器に認められる変化を従来考えられてきたような内的要因ではなく、海外要素の受容といった側面から再評価した点、(2)須恵器・二重口縁壺という日本列島在来の意匠を有する土器資料を対象に、初期須恵器生産の日本列島的独自性についても研究を深めた点、(3)韓半島系土器出土集落および古墳の分析を基礎に、5世紀から6世紀にかけての日本列島近畿地域と韓半島栄山江流域地域の同調的社会変化を指摘した点である。 研究期間を通じた成果は、1)古墳時代日韓交流の歴史的展開を新出土器資料の分析を通じ、再構築を試みたこと、2)近畿地域を中心に韓半島系土器出土遺跡分布図を作成し、土器使用痕跡の分析といった新たな土器観察視点とともに渡来文化受容実態を実証したこと、3)須恵器のハソウといった儀礼用土器に着目し、韓半島系土器の地域展開についてその広域性を評価したことがあげられる。以上、3つのテーマに加え、当初の研究計画より大きく進展した部分としては、古墳時代対外交流を2つのモデルとして捉え、その時期的変化をアメリカ考古学会で発表したことである。以上の研究成果は、専門書刊行によって公開する。 本研究の意義、重要性は、最新出土土器資料から古墳時代日韓交流の歴史的展開を再検討した点、英語圏での発表が少ない古代日韓交流について国際発信を試みたこと、日本古代国家形成における韓半島系渡来人の歴史的役割について、個別的に検討されることが多かった古墳、集落、生産遺跡を有機的に関連付けた考古学的分析によって考察した点にあると考える。
|