本研究は、エジプト先王朝時代(前4000年紀)の硬質土器の焼成技術について、発掘調査と土器資料の黒斑分析により、考察を試みることを目標とする。発掘調査では、当時の熱利用の技術レベルを理解することを目標に掲げ、ヒエラコンポリス遺跡で実施した。結果、火を用いた大規模な食品加工の場が発見され、この時期、パイロテクノロジーの大きな向上がみられた。黒斑分析については、大英博物館にて黒斑分析に耐えうる完形土器33点の実測・観察を行った。接触黒班は確認されるも顕著な黒斑は皆無であり、焼成温度推定の分析や民族例を加味すると、硬質土器は原始的ながらも燃焼室と焼成室が分離する構造的な窯で焼成されたとの結論を得た。
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