本研究の目的は、煉瓦・瓦・タイルなどの窯業製品を考古学的に分析し、日本の近代化過程における産業技術転換の具体相と、その問題点を明らかにすることである。このような目的を達成するために、つぎに述べる三段階で研究を進めることを計画した。 ①煉瓦・瓦・タイルに残された製作技術の痕跡を考古学的に読み取る方法を発揮することで、それぞれの生産の実態を明らかにする。 ②これら三者を比較することで、窯業生産の技術系譜を明らかにする。 ③産業構造の屋台骨とも言える生産者の実態から、近代化の過程を復元し、それが包括する問題点を指摘することをめざす。 調査を進める過程で、日本の近代化を考えるには、日本国内だけではなく東アジアについても観察する必要があることに気づいた。このため、韓国・中国・台湾などにおける煉瓦積建物も調査対象に加えた。そのうち、研究期間中に、韓国(ソウル、釜山)の資料を実際に調査することができた。 大づかみな流れを把握する作業と、個別資料の観察から生産実態の解釈を積み上げる作業とを、併行して進めた。ただし、研究期間の後半は、後者に重点を置く結果となった。
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