研究課題/領域番号 |
25770285
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
小田 裕樹 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (70416410)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 考古学 / 東アジア / 食器構成 / 食事作法 / 比較研究 |
研究実績の概要 |
本研究は、飛鳥時代後半から奈良時代にみられる「律令的土器様式」の展開について、東アジア諸国における食器構成と食事作法の変化という観点から新たな位置づけをおこなうことを目的としている。本年度は、研究2年目にあたり、①資料の実見調査と②現時点での研究成果の公表を主におこなった。 ①では、昨年度に引き続き飛鳥・藤原地域、平城宮・京出土土器の観察・分析をおこない、さらに長岡京・平安京出土土器と箸の観察、三重県斎宮跡出土土器の観察をおこなった。また、百済扶余都城出土土器についても、九州国立博物館の特別展で展示中の遺物を見学し、観察をおこなった。 ②では、都城出土箸の特質に関する論文を執筆し、通説とは異なる理解を提示し、今後の食器使用痕跡研究の重要性を提起した。さらに飛鳥時代後半に操業した歌姫西須恵器窯の発掘調査報告書において、飛鳥時代の土器に関する研究状況について整理し、当該遺跡出土土器群の位置づけについて考察をおこなった。また、帝塚山大学・大阪大谷大学の市民講座などにおいて本研究に関する講演をおこない、研究成果の公開に努めた。
なお、食器表面に残る箸などの使用痕跡について分析・観察をおこなう過程で、食器を遊戯の盤面に転用して使用するという、従来学界では知られていなかった新たな知見を得た。これは本調査研究の当初目的とは異なるものではあるが、本研究を契機として古代律令社会の実態解明に繋がる新たな研究の展開が期待される成果といえ、特筆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主な対象となる日本国内の都城・地方官衙遺跡出土資料について、実見調査を進めることができている。また研究成果の一部については論文として公表、執筆中であることから、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
国内の食器構成が復元可能な資料については、今後も実見調査を進め、成果の公表に努める予定である。また、調査対象地域を中国・韓半島に広げ、実見調査を実施する予定である。 なお、中国・韓半島の資料集成作業の過程で、国内で集成しているような食器構成が復元可能な一括資料の報告例が少ない点が課題として浮上している。これは、日中韓各国の調査報告の方法・視点の違いを示すものでもあるが、本研究を進める上では共通の資料条件に立脚して比較をおこなうことが難しくなることが予想され、時間幅を持つ資料も取り上げて食器構成の復元に努めるなど、比較検討する際の方法論の見直しが必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた韓国における百済・新羅出土資料の実見調査を本年度に実施することができず、次年度に実施することとしたため、調査旅費が次年度使用額として生じた。また、中国・韓国の報告書検索による集成作業を引き続き実施しており、資料収集・集成データ入力作業補助のための人件費が次年度使用額として生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、国内の資料調査を継続することに加え、前年度に実施できなかった百済・新羅出土資料の実見調査をおこなう。このために旅費を必要とする。また、資料収集の成果をデータベースとして入力する作業の補助のために人件費を必要とする。この他、学会での研究発表や情報収集を積極的に進める。
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