平成28年度は(1)九州地方の山間地を事例にした農林地利用の維持・放棄システムに関する研究,(2)トカラ列島口之島を事例にした牧野利用の維持システムに関する研究,(3)都市近郊の野菜生産の研究,(4)都市近郊中山間地域における農地管理の研究に取り組んだ。 (1)これまでの調査結果をまとめて学術誌『地理学評論』へ投稿し,査読結果を踏まえて,追加調査を実施し,再投稿した。2017年度には掲載されるように取り組む。(2)について3回目の現地調査を行い,地域との密な関係を維持することに努めた。そして牧野利用の方法に関するデータを取得するために肉牛繁殖農家へ聞き取り調査を進めた。(3)については,都市近郊における野菜生産の成果は学術誌『地理空間』へ掲載された。(4)の成果については日本地理学会2017年春季学術大会にて発表した。 研究は実施期間を通じて順調に進んだ。とくに著書の出版が一年前倒しで実施できたことは,研究を計画的に遂行できた根拠といえる。一方,九州地方に関する事例研究については学術論文として投稿中であるが,修正に時間を要している点は改善の余地がある。北陸地方の事例研究については,昨年度までは若干の遅れがみられたが,本務地との近接性というメリットを活かして大幅に進展した。成果については国内学会で口頭発表し,投稿に向けた論文を書き終えたところである。さらに,これを英文にして国際誌に投稿する予定である。今後,条件不利地域における農地利用をめぐる海外の事例についても研究を展開できればと考えている。
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