本研究では,農地の維持に向けた農地移動に至るプロセスに,農家間のいかなる社会関係が存在するのかを分析することから,農業集落という物理的空間において,どのように農地利用が維持されているのかを明らかにすることを目的とした。その結果,ムラ的な社会関係のあり方が農地利用の維持に重要な役割を果たしていた。一方,同一集落内に農家と非農家が混住することにより,ムラ的な社会関係の内実や農地の経済的役割は変化していた。農地利用の維持という行為が,経済的利益をもたらさないにもかかわらず,「農家の善意」によって支えられている場合もあった。こうした場合,農地の受手にとっては農地を請負うことは負担となっていた。
|