本研究課題の目的は,廃棄物リサイクルのグローバル化とそのインパクトについて,主に日本の動向を中心に分析することにある。最終年度である2016年度は,以下の3つの課題に取り組んだ。これらの研究経過や成果の概要について以下に記す。 1.国際資源循環に関する研究についての再検討:2016年5月に実施された経済地理学会第63回大会ラウンドテーブル「自動車リユース・リサイクルの経済地理学」でコメンテータを担当した。ラウンドテーブルでの発表者の主たる研究対象である自動車リユース・リサイクルと,研究代表者がこれまで取り組んできた古紙等の再生資源のグローバルなリサイクルを比較検討し,地理学において今後取り組むべき研究課題の再確認と明確化を進めた。 2.離島におけるごみ排出・管理に関する調査研究:2015年度に引き続き,島根県隠岐郡(特に隠岐の島町)を研究対象として,離島におけるごみ排出・管理について調査と分析を進めた。全国的動向や島根県全体の傾向との対比からみえてくる離島の特異性とその要因について分析し,その成果は国際会議において発表した。 3.研究期間全体の総括:最終年度にあたり,4年間の研究成果を総括し,残された課題や今後の展望について整理・考察を行った。本研究では,主に日本と台湾と研究対象として貿易統計などを用いて国際資源循環について分析してきたが,国際資源循環にかかわる日本・台湾双方のアクターに対する調査をさらに進める必要がある。また,近年減少傾向にある日本の廃棄物の動向を正確にとらえるには,廃棄物リサイクルのグローバル化という観点だけではなく,より幅広い視点から検討する必要があることが明確となった。
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