研究課題/領域番号 |
25770301
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研究機関 | 宮崎産業経営大学 |
研究代表者 |
福本 拓 宮崎産業経営大学, 法学部, 准教授 (50456810)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 多文化共生 / 外国人受け入れ意識 / 地域的要因 / 集合的消費 / 教育 / 地域労働市場 / 定住 |
研究実績の概要 |
本研究の主要対象地域である①三重県四日市市,②長野県飯田市について,本年度は以下に示す成果を得た。 ①については,前年度に引き続き「笹川地区共生会議」を中心とする参与観察を行ったほか,日本人受け入れ意識について,新たに集合的消費の観点から分析を行った。特に後者については,多文化共生の文脈で外国人の受け入れ・定住を促進する上では,文化的差異への配慮だけでなく,地域のあり様の検討が不可欠であることが明らかとなった。また,地域における新たな課題として,子どもの長期的なキャリア支援が前景化しつつあることも確認できた。なお,これらの成果の一部を学会誌へ投稿し,次年度には公刊される見通しも立っている。 ②に関し,本年度は日本人住民を対象としたアンケート調査の分析を精力的に行った。具体的には,受け入れ意識に対して個人の移動経験が有意な影響力を有していること,また,中国帰国者の受け入れに対しては,親族の満州移民経験者の存在がマージナルな水準ながら有意という結果が得られた。これらの知見は,外国人住民のモビリティの高低だけでなく,ホスト側住民についても同様の観点が必要になること,また,両者の文化的・社会的・心理的「近さ」が受け入れ意識と関連しうることを示唆している。以上の成果については,2015年1月に飯田市で行われた「学輪IIDA」で発表し,外国人の定住を考える上で文化的差異と移動性の2軸からなるフレームワークが有効であること,および,移動性の高さと寛容性を両立したコミュニティの構築が求められることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
四日市市の事例に関する成果のうち,日本人の受け入れ意識に関するものは次年度の公刊が確実である。飯田市で実施したアンケート調査は,配付数約2500通に対して回収が1300通を超え,外国人受け入れ意識を地域性との関連から分析する上で,非常に有益なデータになりうることが明らかとなった。本年度の夏頃から順次分析を進めており,前年度に実施した外国人アンケートと併せ,来年度にはその成果を何らかの形で公表できる状況が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25~26年度の研究成果を踏まえ,当初の研究枠組みを(良い意味で)修正する必要が生じた。申請時は,外国人の「定住」が地域にとって望ましいこと,およびその阻害要因を実証的に示そうとしていた。しかし,むしろホスト側住民も含めて「定住」概念を大胆に再考し,これまでの調査から得られた質的・量的データを再解釈していく方が適切だと考えるに至った。 そこで本年度は,当初予定していた外国人による住宅取得過程に関する調査に加え,対象地域に関して得られた諸資料・データの分析・考察に注力する。本研究のこれまでの取り組みから,外国人の「定住」促進という目標に対しては,地域における移動性の高さと他者への寛容性の二側面を両立することが不可欠だと感じている。そして,これら両側面が,地域の具体的な歴史―地理的条件とどのように関わっているかを明らかにする必要がある。そこで,上述の資料・データの検討に加えて,「定住」概念の再考に向けた文献調査も積極的に行いたい。 以上の作業を通じ,これまでの「多文化共生」像を再構築し,望ましい受け入れのあり方を呈示することが本研究の最終目標である。
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次年度使用額が生じた理由 |
四日市市にて実施予定であった外国人住民を対象とした持ち家取得過程に関する調査が,飯田市を事例とした研究との兼ね合いから,実施できずに終わったため。また,飯田市での現地調査の機会が,当初予定していたよりも1回少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
飯田市での現地調査については,行政担当者との打ち合わせも含め,当初見込んでいたよりも実施回数を増やすことを見込んでいる(旅費としての増額)。四日市市での持ち家取得に関する調査は,本年度に実施予定であり,旅費および通訳謝金として支出を予定している。これらのほか,本年度に受理が見込まれる学会誌への投稿論文に関連して,超過ページ料・抜き刷り代金に充当する。
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