原発事故やそれがもたらす広範囲の放射能汚染はかつてない経験であり、この事態への対処の仕方の違いによって人びとを分断する。本研究は、人びとが原子力災害の経験を如何に理解し、分断を乗り越えていくことができるのか、生業、地域内外の社会的関係、地域の歴史的経験などの果たす役割に着目しながら民族誌的に記述した。そして、原発事故以前にあった障害者の地域生活運動や、原発誘致計画など、かつて不確実な状況に直面した経験や、地域社会に継承された在来知が、原発事故がもたらす混沌とした状況を整理する枠組みを人々に与えると共に、分断乗り越える糸口になる点を明らかにした。
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