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2013 年度 実施状況報告書

越境する象徴的な自然についての文化人類学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 25770309
研究種目

若手研究(B)

研究機関多摩大学

研究代表者

堂下 恵  多摩大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90434464)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード象徴的な自然 / 越境 / 里山 / SATOYAMA / 保護制度
研究概要

本研究は「象徴的な自然」が越境する様相を精査して脱領域化・再領域化するメカニズムを解明するのが目的であり、具体的にはSATOYAMAイニシアティブを事例に文献調査と実地調査を行う。平成25年度は文献調査によるSATOYAMAイニシアティブ創案過程の分析と、文献・実地調査による欧米での同保護制度の受容と利用についての解明、の2点を主に実施する計画を立てた。
文献調査によるSATOYAMAイニシアティブ創案過程の分析について、自然保護運動や保護制度策定の中で「里山/SATOYAMA」の意義が身近な森林から都市周辺の山林や丘陵地、包括的な農村環境、生態系のモザイク、社会生態学的生産ランドスケープの一例へと変化し、国際的な制度化の過程では科学的・専門的な定義が付与される一方、国内で形成・浸透した里山の意義や価値が衰微する可能性が示唆された。
欧米での同制度の受容と利用の解明については、国内で複数の国際会議が実施されたので参加して情報収集を試みた。その結果、海外の研究者らは「景観/landscape」に関する国際的な制度を比較して特徴を捉え、複数の制度で活動地域の認証・選定を受けて保護を推進しようとしていた。そこで「景観/landscape」に着目して文献調査を進め、この語が対象地域における科学的知識ならびに伝統的知識を包括できる概念であり、保護制度でも効果的に活用されていて、本研究の議論に有用であると確認した。
また、「景観/landscape」に関する複数の制度で認証・選定を受けて保護を進める様相を検討するため、英国・コーンウォール州で実地調査を行った。結果、日本では国際的な制度を上位にして保護制度が階層的に位置づけられる傾向があるのに対し、英国の調査地では必ずしも階層的に捉えられていないことが示唆された。
以上の中途成果は、日本観光研究学会全国大会や京都国際地理学会議で発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究では、「象徴的な自然」が越境する様相を精査して脱領域化・再領域化するメカニズムを解明することを目的とし、平成25年度は、文献調査によるSATOYAMAイニシアティブ創案過程の分析と、文献・実地調査による欧米での同保護制度の受容と利用についての解明、の2点を主に実施する計画を立てた。
文献調査によるSATOYAMAイニシアティブ創案過程の分析は計画通り順調に進んだと判断するが、文献・実地調査による欧米での同保護制度の受容と利用についての解明は、以下の理由でやや遅れていると判断する。
当初はSATOYAMAイニシアティブに関係する欧米の諸団体や関係者にヒアリング調査をして、同保護制度の受容と利用の様相を解明する予定であった。だが、国内で複数の国際会議が実施されたので、参加して海外の研究者や保護運動家から情報収集した結果、「景観/landscape」に着目して調査研究を進めることが重要だと判明した。そこで、文献調査によって関連する学術研究や保護制度を精査し、英国・コーンウォール州で実地調査を行った。これらの活動によって、象徴的な自然の越境のメカニズムを解明する、という目的には近づいたが、当初の研究計画からはやや遅れたと判断する。

今後の研究の推進方策

本研究では象徴的な自然が越境する様相を精査して脱領域化・再領域化するメカニズムを解明する。平成25年度の研究活動を踏まえて今後は以下の内容を推進する。
1. 象徴的な自然の越境を捉える理論的枠組みを構築する。平成25年度の研究結果から、「景観/landscape」が科学的知識ならびに伝統的知識を包括する概念であり保護制度でも効果的に活用されていることがわかった。今後、文献調査を継続し、多様な知識や情報がどのように「景観/landscape」といった概念に集約されるのか、集約された概念がどのように制度に反映されるのか、制度化された象徴的な自然がどのように越境するのか等について精査し、理論的枠組みを構築する。
2. 象徴的な自然の越境のメカニズムを解明するために国内外で実地調査を実施する。平成25年度の研究結果を踏まえ、以下の3点を行う。(1)里山がSATOYAMAへとグローバル化する際に、国内で醸成された里山の価値や意義が衰微する可能性が示唆されたので、国内の関係者や諸団体を対象に実地調査を行って「里山/SATOYAMA」のグローバル化の影響を確認する。(2)英国・コーンウォール州での実地調査を継続実施し、欧米において複数の制度で保護対象に選定された地域で「景観/landscape」を軸とする概念がどのように脱領域化・再領域化するのか精査する。(3)SATOYAMAイニシアティブを含む複数の国際的な制度が一地域でどのように受容され利用されるのか考究するために、SATOYAMAイニシアティブにも関わりを持つペルーの保護地域で実地調査を行う。
研究成果は日本文化人類学会50周年記念国際研究大会等で発表する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 二次的自然の観光資源化の再考-SATOYAMAのグローバル化を踏まえて-2013

    • 著者名/発表者名
      堂下恵
    • 雑誌名

      第28回日本観光研究学会全国大会学術論文集

      巻: - ページ: 293-296

  • [学会発表] The de-territorialisation and re-territorialisation of environmental perspectives with reference to satoyama tourism in and beyond Japan

    • 著者名/発表者名
      Megumi Doshita
    • 学会等名
      International Geographic Union 2013 Kyoto Regional Conference
    • 発表場所
      国立京都国際会館(京都府京都市)
  • [学会発表] Rethinking the concept of satoyama in and beyond Japan

    • 著者名/発表者名
      Megumi Doshita
    • 学会等名
      Research Forum, School of Global Studies, Tama University
    • 発表場所
      多摩大学グローバルスタディーズ学部(神奈川県藤沢市)

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公開日: 2015-05-28  

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