研究課題/領域番号 |
25770311
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
中村 亮 総合地球環境学研究所, 研究部, 外来研究員 (40508868)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 資源利用・管理 / 多民族共存 / 海洋保護区 / 漁民文化 / ジュゴン / インド洋西海域 / スーダン / タンザニア |
研究実績の概要 |
インド洋西海域世界の漁民社会における伝統的な資源利用と多民族共存のメカニズムを解明し、開発による自然・生活環境の悪化が懸念されるアフリカ沿岸地域において住民生活の改善・向上を担うプロジェクトへ、文化人類学の知見より貢献することが本研究の目的である。 海洋保護区において漁民と保護動物ジュゴンがいかに調和的に共存可能かについて、スーダン紅海北部ドンゴナーブ湾海洋保護区の漁撈活動より考察し、『アフリカ研究』に投稿した。 この海域の漁撈活動は、サンゴ礁に生息する魚介類を主な漁獲対象とし、浅海の利用頻度が高い傾向がある。湾外の水深40~50 mの深い海は、高級魚スジハタの漁場である。スジハタは産卵期に集中して獲られるが、漁法は不確実性が高く効率の悪い一本手釣りである。商品価値の高い資源は深い海に潜んでいるが、漁撈技術との兼ねあいからその利用は難しい。加えて、強風や夏場の気温上昇により、漁撈は強い活動制限を受けている。これが天然の休漁となり、過剰な資源利用が抑制されていると推測できる。問題は、ジュゴン混獲を含む浅い海の資源管理である。これまでの調査研究より、ジュゴン混獲の主原因が「夜間に海草藻場周辺に仕掛けられる撚糸刺し網」であることが判明した。この地域では歴史的にジュゴンの利用があったが、今ではジュゴンの商品価値はほとんどない。ジュゴンがかかると高価な刺し網が破損するので漁師は混獲防止を願っている。漁民とジュゴンの調和的共存のために、ジュゴン発見時には漁を中止するや、海草藻場周辺では撚糸刺し網を使用しないという対応が可能である。 また、タンザニア南部キルワ島で現地調査をおこない、鮮魚取引の開始により大幅に変化したスワヒリ海村経済の動態についてシンポジウムで報告した。流通・経済構造の変化にともなう社会関係の変化(余剰海産物の贈与や喜捨の減少)について明らかにすることが今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
スワヒリ海岸部での現地調査および成果まとめ・公開は順調にすすんでいる。本科研期間中に3回の現地調査をタンザニア南部キルワ島で実施し、とくに海産物流通の近年の変化と、それが社会におよぼす影響について考察できた。 しかし、比較対象の紅海社会での現地調査が、現地研究機関との調整がつかずに遅れている。ただし、スーダン紅海北部ドンゴナーブ湾海洋保護区についての論文を執筆し、学会発表するなど、紅海社会においても、成果まとめ・公開は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度中にスワヒリ海村と紅海社会における現地調査を実施し、各地域における沿岸資源利用と管理における在来知について解明する。同時に、比較研究により、インド洋西海域世界のイスラーム海村における、伝統的な資源利用秩序と近年の環境保護政策との関係、および、それが多民族混住社会の住民生活に及ぼす影響について文化人類学的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度予定していたスーダンでの現地調査が受け入れ先とのスケジュール調整がつかなかったために実施できなかった。 現地調査にかかる費用を期間延長申請し承認された。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度7~8月、または12~1月の期間に約4週間実施予定の現地調査の旅費として使用する。
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