本科研では、中国とベトナムの国境ラインにおける漢族文化の利用、及びそれによるエスニシティの変遷について調査してきた。その結果、明らかになったことは、中国側では、漢族のサブ集団である客家や帰国華僑などの特殊な文化に着目し、それを資源として観光化や景観の形成を進めてきたことである。また、政府や企業による漢族文化の発見は、人々のアイデンティティを揺り動かし、例えば地元の漢族が客家を名乗るなど、エスニシティの変遷もみられた。それに対し、ベトナムの北部の漢族は、むしろ移住先で漢族文化を主張し、エスニシティが変化していることが分かった。
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