研究課題/領域番号 |
25770314
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
加賀谷 真梨 国立民族学博物館, 研究戦略センター, 機関研究員 (50432042)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 介護 / 相続 / 土地 / 家 / 家族 / ジェンダー / アイデンティティ / コミュニティ |
研究概要 |
平成25年度は、領域横断的に国内外の「介護と相続」に関する文献をレビューした。介護サービスを利用しながら自律的な生活を送るために転居も厭わない個人主義が徹底した北欧とは異なり、日本では高齢者の生の分有体として血縁家族が認識されてきたため、介護保険法施行後も家族が介護から分離しにくいこと。そうした家族観が、介護者の寄与分を考慮せずに血縁者間で相続の権利を主張し合う事態を招いていることを明らかにした。父系的家社会の中国や韓国では、互酬性という論理に基づき配偶者の代襲相続権が認められているのとは異なり、個は家に帰属するという日本の家制度下における個の不在もまた、高齢者介護に互酬的関係を見出していく視座を排除してきたと解釈できる。 また、高齢者介護と土地の相続の相関に関する実態調査を行う予定の久高島で展開されてきた土地総有制の沿革を文献を通じて明らかにした。その結果、次年度の現地調査では、土地制度のみならず、家単位で相続される位牌や家屋、屋号の継承論理も明らかにすることで、家永続の願いと土地総有制という二つの矛盾する理念の相克を前景化させ、それらの理念と現実の介護実践とが交錯する有り様を立体的に描出できそうであることがわかった。 平成25年度の具体的な研究成果として、本研究課題の調査地の1つである波照間島における介護の実態を日本民俗学会で発表し、その発表原稿に加筆修正を加え、森話社から発刊される『民俗学的人間観の探求(2014)』に寄稿した。また、国立民族学博物館で開催された国際シンポジウム「Social Movements and Production of Knowledge」において、DV被害者のための民間シェルターを運営してきた神奈川県のNPO法人の活動実態を事例に、現在国が後押ししている地域住民の再組織化を通じた地域介護の実践の今後の見通しを予見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に実施予定であった久高島の土地総有制に関する現地でのインタビュー調査のみ平成26年度に持ち越しとなったが、それ以外に同年度に計画していた研究内容は全て達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、まず久高島における土地総有制の実態調査を行う。その上で、久高島と波照間島の双方において、高齢者とその子ども世代を対象とした介護と相続に関する反構造的インタビュー調査と参与観察を行う。その際、土地のみならず位牌や家屋、屋号の継承論理も明らかにし、それらと介護者との関係性を導き出す中で、日本において家族が高齢者介護を担い続ける心意を明らかにする。 また、研究成果は国内のみならず国際学会でも口頭発表を行い、発表原稿を論文へと改稿し、各学会誌に投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に予定していた久高島での土地総有制の沿革に関するインタビュー調査を平成26年度に延期したため。 平成26年度に久高島で上記の調査を遂行するための旅費として使用する。
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