位牌継承における長男の単独相続とそれに伴う屋敷や耕地の財産相続の理念が存続するとされる沖縄の離島社会において、介護と相続の相関性に関する実態調査を行った。波照間島の家族介護者は主に要介護者の夫婦か息子(独身)であり、以前から島で要介護者と同居しているケースが主である。土地の相続人が介護役割を担うことは目的ではなく結果でしかない。また、両親の介護で帰島する者は男性だが長男であるとは限らない。このことから、波照間の家族は慣習法的な長子優先という「祭祀の原理」と社会的現実重視という「生活の原理」と対峙しつつ、職業、農地の有無といった複合的な条件を加味する中で、後者の原理を優先し介護者を決めている。
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