研究実績の概要 |
研究の最終年度である平成27年度の研究実績は次のとおりである。 第一に、平成26年度にやり残したドイツの行政実務についての専門家へのインタビューを行った。すなわち、コンスタンツ大学の移民・難民研究拠点において、実務にも明るい専門家へのヒアリングを行った。第二に、ドイツ移民法制について研究を総括する論文を執筆した(「グローバル化時代の移民法制- 多元的システムから見たドイツの移民法制」『グローバル化と公法私法関係の再編』(弘文堂, 2015))。第三に、所属大学の政治学科研究会において上記論文の内容について報告を行い、法学・政治学の各分野の専門家からフィードバックを受けた。第四に、ドイツ移民法制の現状について研究成果を一般市民に発信する活動として、横浜の外国人労働者を支援する市民団体【カラバオの会】の主催する講演会で発表を行った。この機会には、支援者へのヒアリングや意見交換を行い、日本における入管実務の実態ついても、市民や外国人労働者の視点からの知見を得ることができた。 上記の研究活動を通じてわかったのは、ドイツ移民法制に生じている変化(優秀な移民を獲得する移民制御のための立法・家族生活という人権を保障するという国際人権法上の要請・定住外国人の社会統合を促す法制の整備など)がドイツ固有のものではなく、ヨーロッパ化およびグローバル化と連動した現象であるということである。グローバルに対応した形で、国家の移民政策と人権法上の要請である家族の保護の間にバランスをとる移民法制の一つのモデルケースを呈示できたことに本研究の意義がある。
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