本研究は中世中・東欧の法(文化)研究の端緒としてのザクセン=マクデブルク法についての研究である。その際、(1)ザクセン=マクデブルク法の形成・発展において重要な役割を果たしたマクデブルク参審人(団)についての研究、および(2)彼らが法教示を通して影響を与えた、ザクセン=マクデブルク法を受容した伝播先各国の都市法史についての研究状況の調査、が重要である。それによって、中世中・東欧都市法(文化)史の総合的理解の端緒を開くことが本研究の目的である。 この目的に鑑みて、本研究では(1)に対応するものとして、マクデブルク参審人団の研究、とりわけ(a)同参審人団のプロソポグラフィ的調査、(b)『ハレ参審人台帳』の校訂作業、加えて(2)に対応するものとしてザクセン=マクデブルク法伝播先各国の研究状況の調査、を行うことを計画した。 このうち、平成27年度は、最終年度として、これまでの調査活動を最終確認し、さらに補足的な史料調査を行うこととしていた。このうち(1-a)については、とくに今年度は、文書館において集中的に文書館調査を行い、史料の補完的蒐集を行った。これらの調査により、通説に大幅な修正をもたらす重要史料を発見した。また、(1-b)については、予定していた作業をおよそ終了させた。(2)については、先行研究について文献の蒐集を進め、そこで得られた史料・文献の批判的再検討の結果、より精確な情報を得ることができた。 こうした成果を論文として公表するべく作業を進めていたが、新史料が発見されそれを研究に含めるために、成果論文の公表自体は期間内に終了しなかった。しかし、論文そのものは近時公表予定であり、計画全体の最終像を損なうものではない。
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