前年度までに行なったのは、台湾、朝鮮、そして満洲国における行政救済法制の立案・制定・運用の実態の解明、そして、それに対する弁護士を中心とした現地住民の反応の解明であり、今年度は、前年度までに行なった個別研究をまとめる作業を主に行なった。 従来の研究では、外地法制は、「植民地法制」という観点から捉えられて、内地法との「落差」が強調されてきた。これに対し、本研究では、外地法制を、東アジアにおける近代法の継受の過程と再評価した。これにより、帝国日本における法建設を、単に日本近代法史の一環として捉えるのではなく、「近代法の世界化」の一過程として捉えることを提言した。これは、従来の日本近代法史研究が一国史観に依るものであることを再確認するとともに、その再定位を目指すものであった。 以上の成果は、論文(「東アジア近代法史のための小論」)として、『神戸法学年報』29号(2015年)に掲載した。
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