本研究では、アメリカ民事訴訟のディスカバリー手続きにおける制裁について、なかでも不利益推定説示に焦点を当てた。まずBrookshire事件を紹介した。この判決でテキサス州最高裁は過失によって証拠破棄があった場合にその証拠が重要事実(merits of the case)でないなら、あえて破棄についての説示をする必要はないという見解を示したが、反対意見が付され疑問点も残された。つづいて日本の民事訴訟法224条の真実擬制について先行研究をまとめ、ニチアスアスベスト訴訟を中心に検討したところ、民訴法224条とアメリカの不利益推定説示との違いを明らかにした。そのうえで日本の制裁規定の甘さを指摘した。
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