2016年3月31日から4月2日に、ボストン(アメリカ合衆国)でハーバード大学及びボストン・カレッジの主催で開かれた、アメリカ・ルネサンス協会の年次総会に出席し、2016年4月1日に報告を担当した。 報告は、Biblical Defenses for Sovereignty and Spinoza's Theologio-Political Treatiseというタイトルで英語で行った。グロティウスの時代、すなわち1600~10年代のアルミニウス論争におけるアルミニウス派(グロティウスら)と反アルミニウス派(ゴマルス、ワラエウスら)との主権概念を巡る対立点から説き起こし、転じてそのモチーフが世紀半ばのオランダで人気を集めたホッブズにおいてどのような位相で現れたか、そしてさらに、これらの対抗の諸相が1670年刊の『神学・政治論』でどのように採り入れられ発展させられているかを、聖書解釈を軸に描くことを試みた。 なるべくニュアンスを切り落とさずに論旨を制限時間の中に収めることに腐心したが、その後の質疑や関係者のコメント等から判断するに、おおむね伝えたいことの骨子は伝わったのではないかと思う。アメリカ・ルネサンス協会の年次総会は総合学会として参加者が多く、旧知の研究者だけでなく、ホッブズやスピノザの新しい研究者に出会い意見交換をすることができ、非常に有意義であった。 ボストンからはさらに、ドイツのヘルツォーク・アウグスト図書館に渡り、アルミニウス論争当事者の著作や、ホッブズ受容関係文献、最近年のスピノザ研究につき、追加的史料収集・分析に従事した。
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