宗教戦争の時代に生きた思想家たちは、国家の主権と個人の精神的自由との関係をどのように考察したのか。本プロジェクトでは、当時、議論媒体として駆使された旧約テクスト解釈に着目して思想家間の共通点と相違点を解析する手法を、ホッブズやスピノザだけでなく、グロティウスを含む、17世紀初頭のオランダで生じた「レモンストラント論争」と、その後代への影響関係の分析へとさらに展開した。その結果、単なる「世俗化」の流れといった理解枠組に収まりきらない、いわば「聖」と「俗」が複雑に入り組んだ議論プロセスから上記のような基本概念が生まれてきたことが、具体的資料に跡付けられた形で明らかになってきたと言える。
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