研究課題/領域番号 |
25780014
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
朝田 とも子 熊本大学, 法学部, 准教授 (80612598)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国家賠償責任 / 保護法益 |
研究概要 |
国家賠償訴訟における保護法益の問題を検討するために、本年度は、アスベスト被害についての国家賠償責任を素材に研究を行った。 アスベスト製品を製造・販売したアスベスト関連企業を被告とするアメリカでの訴訟とは異なって、かつて日本では、労災補償によって補填されない損害を使用者に求める民事訴訟が中心であり、国の責任が問われることはほとんどなかった。その後、2005年に起こった「クボタショック」を契機として、アスベスト問題が社会問題として認識されることとなる。時を同じくして、かつてアスベスト産業が盛んであった大阪泉南地域のアスベスト被害者が国の責任の有無を問うて国家賠償訴訟を提起した(大阪泉南アスベスト第一陣国家賠償訴訟)。 大阪泉南アスベスト第一陣国家賠償訴訟に始まった一連の国家賠償訴訟は、全国で提起されている。すでに下された判決の中では、国の責任の有無についての判断は分かれている。また、国の責任を認めた判決においても、国家賠償によって補償される人的範囲が異なっている。本年度はアスベスト国家賠償訴訟の背景を探った上で、大阪泉南アスベスト第一陣国家賠償訴訟第一審判決、同控訴審判決、大阪泉南アスベスト第二陣国家賠償訴訟第一審判決、横浜建設アスベスト国家賠償訴訟第一審判決、神戸アスベスト国家賠償訴訟第一陣第一審判決、首都圏建設アスベスト国家賠償訴訟第一審判決などの具体的な事例を検証することにより、国家賠償訴訟における保護法益の意味を再検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アスベスト国家賠償訴訟は、日本の国家賠償訴訟における保護法益の問題を検討するには示唆に富んだ適切な素材であると考えられる。しかし、比較対象として考えていたドイツにおいては、国家賠償という形式でアスベスト問題が扱われることは少なく、ドイツ法からの示唆を十分に得ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、国内における様々な領域で争われている国家賠償訴訟を詳細に検討することにより、保護法益性の問題をより具体的かつ鮮明にしていく努力をする。それとともに、比較対象であるドイツにおける諸制度との比較を行うことにより、国家賠償訴訟における保護法益の問題に関し、あり得る解答を提示できるよう努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
約5万円の次年度使用額が生じたが、これは購入予定の洋書が、年度内に届かなかったため。 平成26年度には予定している洋書の購入が可能となる。
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