研究課題/領域番号 |
25780016
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
柳瀬 昇 日本大学, 法学部, 准教授 (90432179)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 憲法 / 裁判員制度 / 弾劾制度 / 民主主義 / 自由主義 / 司法権 / アメリカ合衆国 |
研究実績の概要 |
本研究は、裁判員制度と弾劾制度という2つの制度の分析を通じて、自由主義と民主主義との相克について探求するものである。2年度目である平成26年度は、前年度に引き続き文献収集を行うとともに、(1)わが国の裁判員制度及び米国の陪審制度についての理論的探求と運用の調査・分析と、(2)わが国の裁判官弾劾制度及び米国の弾劾制度についての理論的探求と運用の調査・分析について、取り組んだ。 (1)に関して、まず、わが国の制度については、平成26年度日本大学法学部学内学会・研究所合同研究会(比較法研究所企画)において、「比較法と憲法理論――いわゆる裁判員制度合憲判決における解釈方法論を契機として――」と題して口頭報告を行う機会を得た。また、米国の陪審制度については、University of California, Santa CruzのH. Fukurai教授の協力を得て、Santa Cruz Countyの裁判所で、陪審裁判の実態(陪審員の選任過程や説示等を含む)を調査することができた。 (2)に関しては、『Nihon University Comparative Law』第31号(2015年3月発行)に、「Overview of the Judge Impeachment System in Japan: Focusing on the Constitutional Design for the Impeachment Committee and Court」を掲載した。これは、わが国の裁判官弾劾制度について、アメリカ合衆国の連邦の弾劾制度との比較の意義や、わが国の制度の意義・根拠・手続等について述べたうえで、特に弾劾訴追・裁判機関の構成に注目しつつ、その制度の独自性について検討したものである。 なお、平成26年度中に刊行した単著『熟慮と討議の民主主義理論――直接民主制は代議制を乗り越えられるか』の第1章は、本研究の理論的検討部分に大きく関係するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
裁判員制度の合憲性を確認した最大判平成23年11月16日刑集65巻8号1285頁については、平成26年度中に本格的な検討を論文という形で公表する予定であったが、口頭報告を行うにとどまった。 裁判官弾劾裁判所による平成25年4月10日判決については、研究論文を公表することはできなかったが、その代わりに、弾劾制度に関して、その意義等に関する研究論文を外国語で発表することができた。 また、平成26年度中に刊行した単著『熟慮と討議の民主主義理論――直接民主制は代議制を乗り越えられるか』の第1章で、憲法学の見地から現代民主主義理論の潮流を整理したうえで、討議民主主義(deliberative democracy)理論について概説したが、これは本研究の理論的検討部分の基礎と位置づけることができる。
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今後の研究の推進方策 |
研究終了年度である平成27年度においては、裁判員制度に関して、(1)その討議民主主義的意義について外国語での研究発表を行い、(2)その憲法適合性について論文という形で研究結果を公表するとともに、弾劾制度に関して、(3)認知された学会において研究発表を行う。そのうえで、理論的考察を踏まえ、本研究全体のとりまとめを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属研究機関の変更に伴い、本研究のための基盤部分に直接経費を充てる必要がなくなったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、次年度の経費と合わせて、次年度の研究をさらに充実させるために使用することとした。具体的には、研究成果の発表にあたり、外国語での発表を行うための英文校閲料などに充てたいと考えている。
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