研究課題/領域番号 |
25780017
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
田代 亜紀 専修大学, 法務研究科, 准教授 (20447270)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 表現の自由 / 同性愛者 / 同性婚 / フェミニスト |
研究実績の概要 |
本年度は、アメリカにおける表現の自由論についての文献を参照しつつ、社会における少数者の主張をみるうちに、同性愛者の議論に接することが多かった。そこで、本研究課題の主たる対象であるフェミニストとの主張の差異、共通点などを考えながら、研究を進めることで、理解が深まった。アメリカに出張した際にも、同性愛者に対してリベラルな価値観を持つポートランドを選択し、同性愛者の活発な活動に接して、文献にあることが現実としてどのように表象しているか、文献の現実性を確認した。こうした研究成果のうち、同性愛者の憲法上の権利について文献としてまとめることができた。この文献においては、同性愛者がなぜ同性婚を求めるのかという点について、それが社会で正式な婚姻として認知されるからであるという点を取り上げつつ、同性婚の禁止が平等条項に照らして、違憲とされるか否かを検討した。そこでは、婚姻が制度に依存する権利であることやアメリカ連邦最高裁における判決の動きと日本においても「家族」像が揺らいでいることも議論した。このように、この文献では同性愛者の権利について、前提となる「家族」の問題の方に比重が多くなったため、機会を改め、表現の自由論の文脈で上記動きをどのように捉えるか、新たな視点も取り入れながら論じたいと考えている。 また、今年度の研究を進めているなかで、フランスにおいて風刺表現が引き金となったテロが起こり、表現の自由の限界やフランスにおける表現の自由論についての議論が活発となった。現在は、日本・フランスにおける文献を広く集めており、その読解を始めているが、この動きがアメリカの表現の自由論にも影響を与えるのかどうか、本研究課題との関係はかなり密接だと思われ、今後の研究を展開する際に留意したい。そうした意味では、日本におけるヘイトスピーチ規制も議論が深まっており、そこにも目配りをしたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述したように、今年度は研究成果を文献にまとめることもでき、自分なりに地道に研究に励んだが、研究対象が意図せず広がったこともあり、研究内容としては充実しているものの、研究することが多く、その分の遅れを感じている。他方で、一定の研究成果を挙げたので「おおむね順調」としても良いかもしれないとも思うが、自戒も込めて「やや遅れ」とした。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように、同性愛者や風刺表現とテロ活動、ヘイトスピーチ規制など本研究課題と密接な動きが社会にあり、本研究課題がアクチュアリティーと持っていることが確認できる。並行して、関連する文献も充実することで、研究対象が広がり、嬉しい反面、自らの研究効率を考えると不安もある。対応策として、新しい問題に鈍感であることはできないけれども、本研究課題に直接の関係がある場合というように割り切って、あくまでも本研究課題を直接の研究対象として取り組んでいきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
少しの期間ではあるが、「産前産後の休暇又は育児休業による中断」をさせていただき(平成25年12月15日~平成26年03月31日)、その期間に使用しなかったからだと考えます。
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次年度使用額の使用計画 |
本来、購入予定であった文献(アメリカ表現の自由論関係、日本国憲法関係、ジェンダー関係、フランス表現の自由関係)を、再び吟味しながら購入する予定です。
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