研究課題/領域番号 |
25780018
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
白水 隆 帝京大学, 法学部, 助教 (70635036)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 平等権 / 違憲審査 / カナダ憲法 |
研究概要 |
本研究は、「平等権侵害における違憲審査基準の体系化」(以下、本研究とする)と題して、日本国憲法第14条第1項(以下、14条1項とする)が保障する平等権が法令等により制約された際の違憲審査基準を検討を行うものである。平成25年度(以下、25年度とする)は、次の点で成果を挙げた。 まず、25年度は、本研究の手がかりとして、これまであまり着目されてこなかった14条1項に列挙されていない事由に基づく区別とその違憲審査について検討した。これは、これまで平等権侵害とその違憲審査に関する研究が主に14条1項後段に列挙されている事由に基づく区別か否かで審査密度が変動していたことに対し、それは多分に技術的性格を帯びており、真の意味での平等権保障がなされていないのではないかという、交付申請書に記載した本研究目的に鑑み、14条1項後段に列挙されていない事由に基づく区別であっても審査密度が高められる必要性があるのではないかという問題意識のもと、研究を進めた。その上で、列挙されていない事由であっても審査密度が高めることの重要性を説き、その判断基準をカナダにおける議論を参照し論じた。これについては、「憲法第14条第1項後段に列挙されていない事由に基づく区別とその違憲審査に関する一考察」と題した論文にまとめ、公表した。 次に、上記の点と関連し、個別具体的な事例についても検討を行った。そのうちの一つが、性同一性障害者に対する区別(差別)であり、この点も、性同一性障害が14条1項に列挙されていないことから問題となる。これについては、「「性別変更をした夫とその妻との間で生まれた子の嫡出推定――憲法学の視点から」と題した判例評釈にまとめ、公表した。 以上のように、25年度は、理論的研究と具体的な事例研究の双方から、平等権への制約とその正当化における関係性を考察し、2年目に向けての基盤を作り上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度は、上記のように、学術論文及び判例評釈をそれぞれ公表したことから、研究は着実に遂行されている。加えて、本研究がカナダを比較対象の国としていることから、現地での資料収集や研究者との議論も研究目的に組み込まれていたが、この点についても、カナダ有数のロースクールであるブリティッシュ・コロンビア大学で遂行することができ、本年度(以下、26年度とする)の研究基盤を形成する上で有意義な海外調査を実施することができた。従って、研究業績並びに研究手段(海外出張)の双方から、当初予定していた研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、26年度が本研究最終年度であるため、25年度で得られた知見をもとにさらに研究を進め、論文を公表することを考えている。具体的には、まず、いかなる場合に平等権侵害への審査密度が高まるのかという点につき、既存の判例及び学説との整合を図りつつも、本当の意味で平等権保障に寄与していないと思われる点については、カナダの議論を素材に、新たな知見を与えることを引き続き行う予定である。その上で、1つ目は、さらなる個別具体的な事例分析を通して、いかなる場合にいかなる審査基準が設定されるべきかを考察し、2つ目に、それを踏まえて、14条1項に列挙されている事由に基づく区別であっても、無条件に審査密度が上がる必要性がないことを説き、結果として、平等権侵害に対する違憲審査の体系化の土台の構築を目指す予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度(以下、25年度)は、カナダへの海外出張を夏季に行うことを予定していたため、航空費及び滞在費等を計上していたが、諸般の事情により冬季に実施したことにより、航空費の変化、またそれに伴い滞在も1週間ほど短縮されたことから、25年度の助成金の使用額が当初の使用予定額を若干下回る結果となった。 25年度は、研究遂行のため当初購入を予定していたPCなどの物品を購入しなかったため、26年度は助成金の一部をそれらの購入に充てる予定である。また、25年度に引き続き、図書を購入するほか、25年度から繰り越した助成金を用いて、海外出張を行うことも視野に入れている。
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