今年度も、昨年度に引き続き文献と資料をもとにし、昨年度得た視座を踏まえながらアメリカ合衆国における公立学校内の生徒の宗教的自由に関して、各論的な検討を進めた。子どもの宗教的自由の保護について必要な視点を探ることを端緒として、公立学校の学習環境と宗教的色彩との調整について、連邦最高裁のレベルでいかなる憲法解釈を志向してきたかを明らかにしつつある。
また、2014年度9月に渡米し、スタンフォード大学ロースクール図書館、フーバー研究所においてさらなる資料収集を実施した。同大ロースクール付属の人権センターでは講演会もご紹介いただいた。米国における問題意識は、いわゆるイスラム国拡大への懸念と宗教間対話の必要性との間で、規制を強める方向性が(広義の安全保障的な意味合いでも)あるようだが、いかなる基準を適用して合違憲性を決するべきかについての判例分析は観念的というよりは、具体的・生産的、実践的であるように見受けられる。わが国の状況よりも事例が多いこともあいまって、滞在によって有益な示唆を得ることができた。
子どもが公立学校において主張する宗教的自由は、宗教的自由一般や公的空間における宗教一般を考えるのとは少し異なり、親などの保護者が有する「子どもの教育権」の位置づけが欠かせない。子どもの権利にかかる議論を参照しつつ、子どもの基本的権利の特殊性をどう考えるのか、当初構想していたよりも扱うべき内容・論点が広範となってきた。教育権論を本研究課題に引きつけて問題点の摘示することも含めて、できる限りの比較を進めることが来年度の課題となる。現在も作業進行中だが、まずは一定の成果を「沖縄法学」にて公表したい。
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