本研究の研究成果の公表は、平成27年度中に所属機関を異動し研究教育環境の変化に対応するため、著しく遅れた。
平成26年度に宗教(的)教育・行事の公立学校における導入と一部生徒・保護者による批判を受けた対応の経緯に関して米国で情報収集していた。その資料分析を続けた結果としては、少数派の信仰の自由保護の動きがある一方で、その背景として多宗教主義から、米国伝統との結びつきの弱い複数の宗教的伝統が併存する「複」宗教主義への変化があったとまではいえないことが確認された。 この昨年度までの研究の成果を踏まえて、テーマを「教育を受ける権利にこたえる公教育」「宗教的教育を受ける権利にこたえるホームスタディ制度」に焦点を合わせて、研究を進行させた。第12回法と国家研究会で(2016年2月)で「公立学校における生徒の宗教的自由の実現と制約―連邦最高裁判決の検討を中心に」として中間報告を行った。2016年3月におけるインタビューによって、ホームスタディへの権利実現に対する制度の蓄積と、ホームスタディに対するわが国における議論との異同について知見を得ることができた。この成果は、次号の琉大法学に随時、公表する予定で、成果の誠実な公表のため執筆を続けている。
並行して、特定の信仰を有する人・組織に対する公安捜査の統制を問い、イスラム教徒個人情報インターネット流出事件(東京地裁平成26年1月15日判決・判時2215号30頁)について、東北大学公法判例研究会で報告を行うとともに(2015年6月)、判例解説を分担執筆した。
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