研究課題/領域番号 |
25780027
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
張 博一 同志社大学, 法学部, 助教 (70634020)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 非違反申立て制度 / WTOにおける仲裁制度 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、WTO紛争解決制度の分析を通して、WTO体制における「共通利益」の所在およびその実現手段を明らかにすることにある。本年度は、WTO紛争解決制度の特色の一つである条約上の権利侵害または義務履行を争う紛争ではない非違反申立・状態申立に焦点を当てて検討を行った。 非違反申立・状態申立とは、加盟国がWTO協定に規定する義務に違反していなくても、その「合法」的な行為が他の加盟国の利益に無効化・侵害をもたらした場合に、申立てを認める制度であり、国際違法行為の存在と当該行為の帰属を要件とする国家責任法の観点から特異であり、如何なる措置も申立て事由となりうることを意味する。このことは、本課題の研究対象である「保護利益」と密接に関連する。 そこで、過去の判例を通してその基準の明確化、さらに、非違反申立てにおける立証責任、救済方法を検討し、その結果、たしかに現在においても非違反申立ては申立て事由の一つとして認められているものの、WTO協定の規定範囲の拡大、DSU3条8項における違反行為に基づく利益の無効化・侵害の推定、さらには強制管轄権の存在により、ほぼすべての事例が違反申立てによって対応できていることを明らかにした。もっとも、TRIPS協定との関係において特別に研究と進める必要がある。 このほか、国際経済法学会において「WTO紛争解決制度における仲裁の位置づけ」について報告を行い、この報告を基礎として執筆した原稿が2015年国際経済法学会年報に掲載予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の大きな部分を占める「申立事由からみる利益概念」の分析が完成した。 仲裁制度の観点から、WTO紛争解決制度における「二国間紛争解決」の分析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度となる平成27年度はパネル・上級委員会報告書の実施と監視制度を考察しつつ、これまでの検討結果を成果としてまとめることとする。現実の国際社会において、国際紛争の最終的な解消という観点からは、裁判所の判決の言渡しをもって紛争が解決すると考えることは到底できない。そこで、判決が言い渡されたのちに、具体的に各国はどのように履行を行っているのかを検討する。具体的には、(1)履行確認パネル(2)金銭代償(3)効果的違反を個々のテーマとして、WTO紛争解決制度における遵守確保制度を通して守られる「利益」について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に予定していた執筆論文の英語校閲、資料整理、海外出張を行うため。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度大学業務の関係で行えなかっ執筆論文の英語校閲、資料整理、海外出張を夏期、冬期の休み期間中に重点的に行う予定である。
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