研究課題/領域番号 |
25780028
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
和仁 健太郎 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (40451851)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 中立 / 非交戦状態 / 捕獲 / 武力紛争法 / 戦争 |
研究概要 |
戦争・武力紛争の当事国と非当事国との関係は、どのような内容の国際法により規律されるのか。本研究の目的は、この問いに答えることである。この問題は、かつてこの点を規律していた伝統的中立制度が現代においても妥当するのか、妥当するとしても武力行使禁止原則によって何らかの影響を受けているのかをめぐって論じられる。この問題については、従来、現代国際法において「非交戦状態」(中立の地位に立たず、一方交戦国を援助する態度)が合法か否か、という観点から論じられてきたが、本研究代表者のこれまでの研究成果を踏まえれば、設定すべき問いは、「非交戦状態」の態度を選ぶことには中立の地位を選ぶことと比べて法的にどのような不利益があるのか、また、中立の地位を選ぶことには法的にどのような利益があるのか、という形で定式化されなければならない。伝統的中立制度における「公平義務」は、相互に平等な交戦国の差別扱いを禁ずる義務ではなく、中立の地位を維持するために満たすべき「条件」であり(この「条件」を満たす国は、戦争の外にとどまること、つまり交戦国にさせられないことを「権利」として法的に保障された)、中立の地位を維持するつもりのない国(戦争に巻き込まれ交戦国になっても構わない国)が「公平義務」に反する行為を行うことは自由だったからである。 本研究は、以上の視点から、第二次大戦後の国家実行の実証的研究を行う。平成25年度は、国連憲章制定過程および1949年ジュネーヴ諸条約起草過程の網羅的検討を行ったが、残念ながら、それらにおいては「中立」への言及がそもそもほとんどなく、本研究にとって有益な知見はほとんど得られなかった。ただし、これは、研究開始前からある程度予想していたことであり、平成26年度以降に行う、第二次大戦後に起こった具体的な武力紛争における国家実行の検討において、有益な知見が得られることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した通り、平成25年度は、国連憲章制定過程および1949年ジュネーヴ諸条約起草過程において中立概念および中立制度がどのように扱われていたかについて、それら条約の起草作業の議事録を検討する作業を行った。検討の対象となる議事録の分量は膨大であるため、1年間の時間を要した。検討の結果得られた有益な知見は残念ながらほとんどないが、それは当初から想定済みであって、研究はまったく予定通りに進行していると評価できる。つまり、国連憲章制定過程とジュネーヴ諸条約起草過程では、中立概念および中立制度についてほとんど触れられていないのではないかと当初から予想していたが、ほぼ予想通りの結果であった。これらを検討することによって有益な知見が得られる可能性は当初から低かったが、やはり検討と確認は必要なのであって、平成25年度は、その作業を当初の予定通りに実施し、ほぼ予定通りの結果となった。したがって、「当初の計画以上に進展している」とは評価できないが、「概ね順調に進展している」とは評価できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、交付申請書に記載した計画通り、国連憲章制定後の国家実行の調査・検討を行う。「現在までの達成度」欄に記載した通り、研究は予定通りに進展しており、当初の計画を変更する必要はないと考えている。 具体的な作業内容は次の通りである。すなわち、国連憲章制定後の国家実行において、戦争・武力紛争非当事国の法的地位がどのように捉えられていたか、「中立」や「非交戦状態」の概念がどのように用いられていたか、戦争・武力紛争の当事国(交戦国)が戦争・武力紛争非当事国に対していかなる行為を行い、その行為をどのように説明し正当化していたのか、戦争・武力紛争非当事国は自らの行動をどのように説明し正当化していたのか、といった点を明らかにする。収集・検討すべき資料として、具体的には、各国の外交文書、議会における法令や外交問題の審議過程、国内裁判所の判決、国連の諸機関(特に安全保障理事会と総会)の決議や議事録、条約(国連憲章や1949年ジュネーヴ諸条約など)の起草過程などを予定している。検討すべき国家実行としては、具体的な戦争・武力紛争における国家の行動および国家がその行動を法的にどのように説明したのかという点が中心となるであろうが、その他にも、中立の問題に関連する国内法令(例えば我が国の場合で言えば1999年周辺事態法や2004年外国軍用品等海上輸送規制法など)の制定過程なども検討に値する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額644円の範囲内で購入可能で、かつ、研究計画実施にとって必要なものがなかったため。 書籍の購入に充てる予定。
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