本研究では,マルチジョブ就労者の労働時間規制をめぐる比較法研究を試みた。いわゆる非典型雇用をとりまく法制度が大きな転機を迎えるなか,各国におけるマルチジョブ就労者に関する固有の議論は手薄である。もっとも,EUの労働時間指令のもと,オランダやドイツでは勤務間インターバル規制を軸とした労働時間規制が展開され,マルチジョブ就労者についてもこの枠内で保護が目指されており,ただ,兼職に伴い使用者が労働者の就労実態を把握し得ない問題について,労働者の協力義務を課すなどすることで調整が図られていることが明らかとなった。こうした動きは,日本で今後の立法政策のあり方を検討する上でも十分な示唆があるといえる。
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