平成26年度は、これまでの労働法の基礎理論に関する研究を踏まえて、それを具体的な解釈論に展開する研究を行った。具体的には、就業規則法制、差別禁止法、ストライキに関する立法論、解釈論について考察を加えた。
本研究の目的は、EU諸国で展開されている、労働法の新たな規範的基礎としての潜在能力アプローチの意義と射程を検証するところにあった。潜在能力アプローチとは、労働者の価値ある自由の保障に労働法の規範的基礎を求める見方であるが、ここでいう「価値ある自由」の具体的内容は明確ではない。そこで、潜在能力アプローチは、価値ある自由の内容を明らかにするための職場民主主義や労働者による政治参加の重要性を説く。 平成26年度は、以上のような潜在能力アプローチを労働法の具体的な各論的テーマに応用した研究を進めた。具体的には、政治的ストライキの位置付けや就業規則論への応用である。その研究成果は、ストライキについては平成27年度の秋頃にKing's Law Journalに、就業規則論についても秋頃に日本労働法学会誌に掲載される予定である。
平成26年度については、潜在能力アプローチの観点から、わが国における雇用差別禁止法のあり方について考察を進めた。雇用差別禁止法は、契約の自由を規制する立法規制であるが、その規制根拠は、必ずしも明確ではない。平成27年度については、これらの考察に関する研究成果が公表できるように、さらに研究を進めることとしたい。
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