研究課題/領域番号 |
25780043
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
西岡 正樹 山形大学, 人文学部, 准教授 (40451504)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 刑法 / 責任概念 / 責任主義の原則 / 累犯加重 |
研究概要 |
本研究は、わが国の現行刑法典に存在している累犯加重規定を研究対象として、当該規定の現代的意義を考究するものである。重ねて犯罪を行った者が一定の要件を備えた場合に刑を加重する旨規定する累犯加重の根拠については、これまで内外において活発な議論が行われてきた。その結果、かつて累犯加重規定を刑法上有していたドイツやスイスにおいては、当該規定は、刑法上の大原則である責任主義の原則に反するとして削除されるに至っている。本研究は、これらの国々との比較法研究を基礎として、わが国の累犯加重規定が存置に耐え得るものであるかについて批判的に検証するという視点から、当該規定が孕む問題点を抉り出すことを目的とする。 現在、わが国において累犯加重の説得的な正当化根拠は見出し難い状況にあるが、責任主義の原則を堅持するならば、累犯加重規定の存在は否定されるべきではあるまいか。本研究は、累犯加重規定が孕む問題性について、責任論と刑罰論の観点から、特に、近時当該規定を廃止したスイス刑法との比較法研究を中心に行いつつ、さらに、刑事政策的側面から累犯加重規定の運用の実態、および累犯加重規定がもたらす累犯予防にとっての効果如何について実証的に考察することに力点を置く。この点に、本研究の意義と重要性が認められるといえる。 平成25年度は、本研究課題の出発点として重要となる「刑法上の責任概念」について、その内実を明確化する作業を進めた(本年度論文公表予定)。また、当該年度初頭に従来より研究を進めていた本研究課題に関する研究の一部を論文として公表した(西岡正樹「累犯加重に関する一考察」法政論叢56号[2013年]1~30頁)。その後、当該論文についての書評を頂いた(中島広樹「書評」平成法政研究18巻1号[2013年]145~153頁)。平成26年度は、書評において指摘された疑問点の検討を中心に本研究の更なる深化を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究計画調書」の「研究目的」でも言及したように、平成25年度は、本研究課題の出発点として重要となる「刑法上の責任概念」について、その内実を明確化する作業を進めた。また、本研究課題に関する研究の一部として公表した論稿(西岡正樹「累犯加重に関する一考察」法政論叢56号[2013年]1~30頁)についての書評を頂いた(中島広樹「書評」平成法政研究18巻1号[2013年]145~153頁)ことから、本研究課題において明確に論証されねばならない点が新たに指摘され、本研究の更なる発展の足掛かりとすることができた。平成26年度は、指摘された疑問点の検討を中心に本研究の更なる深化が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の終極的な目標は、わが国の累犯加重規定が存置に耐え得るものであるかについて批判的に検証するという視点から、当該規定が孕む問題点を抉り出すことである。 平成26年度以降は、平成25年度に取り組んだ研究の成果を公表することを第一義とする。さらに、平成25年にわが国において「再犯防止」を一目的とした「刑の一部執行猶予制度」導入のための刑法改正がなされたことから、このような動向も視野に入れつつ更なる研究の深化を目指す。 本研究課題である累犯加重については、量刑における前科の位置付けについて活発な議論が行われていることから、近時再び論究されるようになっている。このような動向を念頭に当該分野における研究の発展に寄与し得るよう尽力したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度は旅費として支出額を予定していたが、交付開始前に刑法学会が開催(2013年5月25-26日於中央大学多摩キャンパス)されたことと、他の遠方での研究会への参加も他の行事への出席等により参加することができなかったため、次年度使用額が生じた。 なお、申請者勤務校所在の東北地方での研究会は東北大学(仙台市青葉区)で開催されたため(当該年度申請者は仙台市に在住)、旅費の支出の必要はなかった。 本研究課題については、近時国内外で多数の関連する研究図書が出版されていることから、次年度使用額をできる限りこれらの図書の購入に充てたいと考えている。 翌年度請求分については、当初の予定通り設備備品、旅費および外国法データベースの購入費として使用したいと考えている。
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