本研究の目的は、平成17年会社法制定により大きな変更を加えられた新たな会社(法)制度・資本概念下における、我が国会社法罰則の理論的根拠を再検討することである。 現商法及び会社法のもととなる明治32年商法及び明治44年改正商法は、ドイツ法に基礎をおいて作られたものであったが、昭和25年の改正以降、我が国は、授権資本制度を始めとするアメリカ法の制度を多く取り入れてきた。そこで、現在の我が国会社法罰則の処罰根拠を見直すにあたり、アメリカにおける株式会社に対する規制の在り方やその処罰根拠を参照する方法を採用した。 アメリカの各州会社法等のうち、特に重要なものとして挙げられることの多い、模範会社法・デラウェア会社法・カリフォルニア会社法における罰則規定を抽出したところ、それぞれ情報開示の場面を規制する罰則を置いているという共通点を見出すことはできたものの、我が国の会社法主要罰則に見られるような債権者保護を目的とする刑罰規定はほとんど見受けられないこと、結論として、アメリカ法における会社債権者保護は、契約等あるいは会社法以外の法律などの罰則以外のもので担保されていることが明らかとなった。 以上の知見を反映させての、現在の我が国会社法罰則の理論的根拠の再構築はいまだ途上であるが、アメリカと日本の資本制度及び関係罰則領域の比較に特化した研究は他に例を見ないため、一定の成果を挙げることができたと考える。また、アメリカの会社関係法体系の知識を得たことで、今後、本研究を継続していくにあたっての指針を得ることができた。
|